旅行記 | mom0tomo

旅の記録

マウロのキャンピングカー | モデナ

マウロの家で

マウロは指笛が上手なおじさんだった。

ギルランディーナという観光名所になっている塔の前でピックアップしてもらう予定だったが、電車を間違えて遅くなったおかげで、駅でピックアップしてもらうことになった。

マウロの家はモデナの駅から30分かかる田舎にある。 煉瓦の壁に赤い屋根の、エミリアの田舎らしい素敵な建物が見えてきた時、私と相棒は驚きの声を上げる。 刈り取られた麦畑の中に建物が点在する様は絵本の中のようだ。

本日の宿は、この家の庭にあるキャンピングカーだ。 シャワーはないが、3口コンロやトイレがついていて、ベッドは4人分もついている。

キャンピングカーの脇から、ネコかタヌキかというもふもふした生き物が現れる。とても人懐こい。 マウロのうちで飼っているのか、よくわからないが、全く警戒せずに私たちの足元でゴロゴロと喉を鳴らす。喉を鳴らす音はとてもとても大きい。そして一度も鳴かない。やっぱり小さいクマかもしれない。

マウロの家に入り、ご家族に軽く挨拶する。 優しそうなお母さんと小さな小さなおばあちゃん、14歳のマティアスと7歳のマルコがご飯を食べるところだった。

家の中はとても暖かく、木と煉瓦のぬくもりに溢れている。マティアスは日本の漫画が好きなんだ、とマウロが教えてくれたが、恥ずかしがり屋な彼は控えめに端で立っている。初めて日本人を見たマルコは、目を丸くして興味深々だ。

マウロが、翌朝マティアスとマルコを街中の学校へ送るついでに私たちを乗せてくれるという。 家の目の前がバス停なのだが、本数が少なく利便性が悪いのでマウロは乗ったことがないという。好意をありがたく受ける。

相棒がバローロで買ってきた白ワインをマウロにプレゼントする。 マウロからも素敵なプレゼントがあった。 小瓶に入ったモデナ名産のバルサミコ酢と手造りの発泡ワインだ。 発酵の過程で自然に炭酸ガスが発生する若いワインで、輸送ができないことから生産地だけの特別な楽しみだ。 下の方に濃いオリがたまっている。あっさりしたフレッシュジュースのような飲みやすさで、とてもとても美味しい!

スーパーで買ってきたヴルストを焼き、紫キャベツをオリーブオイルで炒めて、スーパーで買ったツナ・トマトソースをすくいながら本日の夕食。キャンピングカーの夜は少し冷えるけれども、火を使えば暖かくなる。

学校へ向かう道

翌朝、フィレンツェへ移動するため朝早く起きる。朝焼けの畑が美しい。庭のデッキで荷造りをしていると、マウロが熱いエスプレッソとフィンガービスケットを出してくれた。なんて幸せな朝だろう。

相棒が助手席に座り、私は緊張気味のマティアスの隣に座る。 マウロのバンは所々凹み、いろいろなアウトドアや日曜大工の道具が載っていて、よく使い込まれている。

マティアスと少しだけ日本の漫画の話をする。口数は少ないが、とてもきれいな英語を話す。 日本の学校ではハチマキをしているのか、と聞かれて、運動会の時はするけど、毎日ではないよ、と話す。

マウロは二人を次の夏にイギリスに短期で語学留学させたいと話す。 マウロの英語も十分に上手だが、彼は高校を出てすぐに仕事についたので、英語は独力で身につけたという。 日本と同じく義務教育の中では週に数時間の英語の授業があるだけだし、イタリア国内では英語を使う機会は少ないそうだ。

これからは英語が重要になってくるから、子供達には英語を身につけさせたいんだ、とマウロは話す。マウロは二人の子供をとても大切にしていて、その将来に期待している。

学校の前で二人を降ろした後、市内を回るがてらギルランディーナや旧市街を軽く案内しながら車で回ってくれる。何度も感謝の気持ちを込めて、ありがとうを伝えた。

モデナ駅で新幹線に乗る

ボローニャへ移動して新幹線に乗らねばならないので、駅についた時間はギリギリだった。

あいさつもそこそこに、モデナ駅を走る。この電車に乗り遅れたら、新幹線に乗ることもできなくなる。新幹線のチケットは高価で、当日の切符はさらに値上がりする。走りに走っても時間には間に合わなかったが、電車が5分遅れていてくれたおかげでどうにか乗ることができた。

ボローニャ駅はとても広く、分かりやすい駅だ。ただ、乗り換えに10分しかないので安心はできない。 駅を地下二階まで走る。新幹線の発着は地下1階か二階だ。電光掲示板に番号と発車予定時間、現在の遅延時間が表示される。

新幹線の中は電源とWIFIがあり、座席もゆったりとしていてとても快適だ。時折車内販売のカートも回ってくる。

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